PLAYFUL Lab.から生まれたHINT
PLAYFUL Lab.
「日々のなかに、あそび心を」
人種や性別、障害や年齢、地域に関わらず、
日々のなかで“はじめて”と出会える環境をひらくことで、
今はまだない未来を創造する力を育んでいくプロジェクトです。
PLAYFUL Lab.は、淡路島の島内外から集めた廃材を使い、
誰もが自由に手を動かし、試し、つくることができる場所。
素材と向き合うなかで生まれる発想そのものを大切にしています。
その過程のなかで、
「こんなふうに素材と出会うこともできる」という
ひとつの案として生まれたのが、廃材を活用したクラフトキットです。
それは完成された答えではなく、
素材を使うための入り口のひとつにすぎません。
そしてもうひとつ、
素材と向き合う時間そのものに寄り添い、
考えはじめるきっかけを手渡す存在として生まれたのが
「HINT(ヒント)」です。
ここでは、素材と出会い、遊びながらつくる
PLAYFUL Lab.のHINTをご紹介します。
手を動かし、迷い、試しながら、
少しずつ自分なりの気づきに出会っていく。
そんな過程にそっと寄り添う存在でありたいと考えています。
ここからは、真珠核という素材に、戸惑いながらも本気で向き合った丸山僚介さん(山脈・店主)の記録です。
HINT 02 -真珠核-
実はお断りしようかと思ったんです。真珠核って聞いたときは。
だってもう、山脈の普段つくってるものたちと質感も雰囲気も真逆すぎて。
ツルツルのものをわざわざザラザラにしたいとすら思ってるのに。
無理難題!
そんな僕が真珠核に向き合った記録です。
まずは、成果物からお見せしましょう。
こちら。

電球を真珠核で埋め尽くしたテーブルライトを作りました。
様々な実験を経て発見した「光を通す」という真珠核の性質に着目し、その魅力を引き出すデザインを目指しました。
初対面の心象に反して、とても山脈らしく、大好きな雰囲気に着地できました。


この照明に辿り着くまでに、色々な実験をしました。
大筋はPLAYFUL Lab. HINT 02に楽しくまとめていただいたのでぜひそちらをご覧いただきつつ、こちらではその裏側を書いてみます。
冒頭にもある通り、はじめにお話を聞いた時は断ろうとすら思ったんですよ。
オファーの内容は、PLAYFUL Lab.で素材として真珠核を使うときのヒントになるような紙面を作りたいとのこと。「使う方のほとんどがボンドで貼り付けて装飾にして終わりなんですよねー。もっと色々使って欲しいと思っててー。」と。
なるほど、細かくつぶつぶした素材、コレから何かを作るなら、「どう固定するか」は確かに鍵になりそう。ふむ、、いやー、、僕も貼るしか思いつかないかも!穴あけて糸とかワイヤーを通すとか?いやーいよいよジュエリーになっちゃう。えー。
「貼る」もやんわり封じられたし、えらいこっちゃー。
などなどと、数日悶々としました。
打ち合わせで淡路島に行く車中には覚悟を決めて、何がなんでも自分が納得できるところまでやってやろう!と思ってましたが。不安、すごかったです。
そんなこんなで打ち合わせが始まり、真珠核とご対面です。
触ってみると、なんとも心地よい肌触り。つるつるすべすべ。
手を突っ込んでみるとずしっと重みを感じる。
ひんやりもしてる。
よくよく見るとなんだか割れているのもいるな。
え、元々はこんなでかい貝殻から切り出してるの?
なんだかイメージしてたこと以上の発見が続々と出てくる。
面白い。先入観がめっちゃあったかも。
わかってるつもりだった素材のわかってないことがどんどん見えてきて、不安はすっかりワクワクに変わってました。
こんなとき僕は、いかんいかん!と立ち戻り、無知の知を発動するようにしてます。
知ってる“つもり”になってたことがそこにないか、改めてよく観察する。そうすると、結果を予想だけして、試してないことがたくさんあることに改めて気付ける。このメタな視点ってものづくりするとき、とても活躍してくれるんですよね。忘れがちですが。
これか、この視点が今回の「HINT」そのものか。
ということで、先入観で素材に向き合ってしまって断りかけてた自戒も含め、今回の何かを作り始める前の”実験”に着目することをものづくりのヒントとしてお伝えする紙面作りに繋がりました。
実験は紙面にある通り、色々試しました。
載せてないものも実はいくつかあって、実践した内容はこんな感じです。
| 実験ジャンル | 実験内容 | 結果 |
| 身体で感じる | 重さを感じる | ボーリングの玉とおんなじくらいの重さ |
| 舐める | つるつる。味はしない。飲み込みそうだからやっちゃダメ。 | |
| 嗅ぐ | 匂いはしない | |
| 手で触る | つるつるさらさら気持ちいい。手を突っ込むと重さも感じる。 | |
| 踏む | 足つぼに効きそう! | |
| 拡大して見る | 表面が木星みたいなマーブル模様。色も一つずつ違う!割れた断面は結構色々。つるつるなやつもあれば、つぶつぶでざらざらなやつもあった。 | |
| 音を聞く | 貝同士が擦れる音、とても心地よい。お米よりも高い音。砂利よりも優しい音。 | |
| 吹く | テーブルの上だと転がる。曲げたストローの上に1つ乗せて吹いたら浮いた。 | |
| 力をくわえる | 割る | ペンチで割ると砕けて粉々。ハンマーも粉々。割れる時、必ずしも力をかけた向きではなく、貝の模様と同じ向きに割れてるみたい。 |
| 研ぐ | 結構削れる!石ほど硬くはなくて、加工できる。 | |
| 穴を開ける | ドリルを当てるのが難しいけどじっくりやれば穴は開けれた。真珠核の固定が大事。 | |
| 転がす | バットに置いて傾けてみると割れた真珠核は転がらずに止まり、球状のものは転がって下方に溜めることができる。 | |
| ペンを刺す | 真珠核をたくさんコップに入れ、ペンを刺してみた。核に支えられてペンが自立した。 | |
| 熱をくわえる・うばう | 炒める | 色がブラウンに変化した。小さい粒の真珠核は温度が高まった後、ポップコーンみたいに弾けて割れ始めた。半分に割れるだけでなく、薄くスライスしたような形で割れた |
| 凍らせる | 変化なし | |
| 茹でる | 変化なし | |
| 環境を変える | 光らせる | 光を柔らかく透過した。光源に近いほどよく光り、たくさん重ねるにつれて光が届かなくなっていた。 |
| 水に入れる | 沈む。水よりは重い。水に入れる前と入れた後での重さの変化もないので水は吸わない。 | |
| 器に入れる | ガラスのコップに入れた。きれい。 | |
| 比べる | 木と比べる | 木とくらべると素材自体は硬いけど、貝の年輪は結合が弱く木のように加工しようとすると割れやすい。磨いた時、手触りは大きく異なるが、表情は年輪があるためイメージが近い。 |
| 石と比べる | 石よりは柔らかい。穴を開けたり削ったりすることに関しては石よりも加工しやすい。磨いた時の表情は近しいものがある | |
| 鉄と比べる | 鉄の性質である柔軟性があって曲げたり伸ばしたりできる点においては真珠核は真逆で、柔軟性がなく脆くて割れやすい。磨いた時の表情も鉄は無機質で真逆の印象を受ける。 | |
| 情報を集める | 真珠核の作り方を調べる | 原貝を切断。円盤で丸くし、サイズごとに選別、艶出し加工 |
| 歴史を調べる | 明治40年、ドイツ人が貝ボタンの製造法をわが国に伝え、明治42~43年頃に洲本市内で製造が始まった。原料、製品の輸入基地神戸港に近接しているため、家内労働力を活用した産業として栄え、軍服用ボタンとして需要が伸びた。第二次大戦中は産地全体で淡路製釦を設立し、業界を一本化した。戦後、統制解除となったが主原料のドブ貝の輸入が中止になったため、南方産の海水貝に原料転換した。昭和25年、真珠核もボタンと同様に貝を加工する製品であることから、洲本市の1業者が淡水貝を使い真珠核製造を手掛けた。昭和30年代は合成樹脂系の化学ボタンが登場したことに伴い、化学ボタンへの転業が相次いだ。これとほぼ同時に大阪府下の技能者を迎えて本格的な真珠核の製造が始まった。昭和35年から40年頃にかけて世界的な真珠ブームがおこり、化学ボタンに押された貝ボタン業者が一斉に真珠核製造に転業した。最盛期の昭和40年代前半には、業者数は130に達した。好況は長くは続かず、昭和40年代後半には、1.生産過剰、2.海洋汚染、3.真珠ブームの沈静化等のマイナス要因が重なり、業況は悪化した。その後、昭和50年頃には再び活気を取り戻し、需要と供給のバランスが回復した。昭和55年に11業者によって、淡路真珠製核協同組合が設立された。この組織化により相互扶助の気風が生まれ、目まぐるしく変化する社会に組織力で対応できる基盤が確立された。しかしながら近年は世界的に宝飾品需要は冷え込んだ状態が続いており、真珠核生産高も減少傾向となっている。 | |
| 素材のことを調べる | 真珠核は養殖真珠の芯となるもので、養殖真珠の「原料」である。この核をアコヤ貝に植え付けて海中に沈めておくと真珠層が巻きついて、真珠が誕生する。真珠核の主な原材料は、米国・ミシシッピー川のオーヒラ貝やミツヤマ貝である。これを神戸の商社が輸入するため、真珠核製造業者は陸上・海上輸送とも淡路島島内では最も利便の良い洲本市に集中している。真珠核製造業者は、貝ボタン製造業者からの転業者が多い。 | |
| 応用する | 照明をつくる | 光が透けることに着目し、照明をつくることにしました。透けるけど、透過率が低いこともわかったので光源を中心に真珠核を山盛りにし、光のグラデーションを生むようなデザインにしてみました。 |
振り返ると色々やってますね。
中でも変化が面白かったものの詳細をいくつかご紹介します。
まずはこちら。
「真珠核を炒める」
まずやろうと思った実験がコレでした。かなり意外な結果に!
徐々に茶色くなっていったのも意外だったけど、なんだかフライパンを振っていると飛び出る奴がいる。そんなに激しく振ったかな?と思いながら振り続けるとまた飛び出る。なにこれ?と思って振るのをやめてじっくり見てみると、ポップコーンのように真珠核がなんだか跳ねてる。跳ねたやつを目で追うと、どうやら割れている!どんどん割れていき、鱗みたいに薄いものがたくさんできました。



この結果を見て、おそらく、貝が成長する時、貝殻は細胞分裂で組織が増殖するような成長ではなくて、成分が積層されながら大きくなるのかなと予想しました。真珠核から真珠ができるカラクリも多分これですね。年輪みたいな模様が出ているやつもあったのも納得です。
本当かどうかは調べてませんが。気になる人はネットで答え合わせしてみてください。
次はシンプルに「拡大して見る」。虫眼鏡です。




これもなるほど〜なことがいくつもありました。
炒めた結果の気づきに繋がる年輪模様を発見。木星みたいな雰囲気を醸していてとても綺麗でした。
割れた断面も一様に同じ、というわけでもなく、つるつるだったりつぶつぶだったり。部位の違いでしょうか?



他にも、茹でたり、凍らせたり、転がしたり。変化が期待できなくてもとにかくやってみる。


ペンを立ててみたりもしました。これはかなりよかったです。真珠核の「重さ」が生かされて、ペンや文具がいい感じに自立しました。砂利でも作れそう。
そしてこちらが「光を当てる」。
今回採用した実験結果です。まずは透明の器に敷き詰めて携帯のライトを当ててみました。
光が透ける!を確認できました。美しい!


そこから「ガラスの器に真珠核を貼り付けてランプシェードにする」案が生まれて、まずは平面で並べて光を当ててみた。でもなんだかイマイチ。さっきの美しさがない。
比べてみると、平坦に並べたものより、たくさんの真珠核を経てあふれた光の方がランダムで、有機的で、奥行きが深くて、綺麗だった。
ということで軌道修正。「ガラスの器に照明を仕込んで真珠核を山盛りにした照明にする」案になりました。
積層された真珠核を経て光が出る状態を目指して、器の形を色々試してみました。

理科の実験的でいい感じ。サイズ感も電球っぽい。

貝らしくもあっていい感じにはまってる。
こんな流れでこの照明が完成しました。



今回は紙面を意識したので実験は網羅的に広く浅くやってみましたが、気になる変化があればそこに集中して、もっとじっくり深く掘り下げてみるのもおすすめです。例えば、火にかける行為も「炒める」「茹でる」以外にも「炙る」「揚げる」「蒸す」「燻す」などなど、やってないことはまだまだある。やり切った先に、何にもないかもしれないけど、何かあるかもしれないですよ。
検索したらなんでもわかる今こそ、一見無駄なことでも全力でやる。
フィジカルで得る結果は経験則も先人の知識すらも、あっさりひっくり返していくはずです。
身の回りで見過ごしているものをあらためて意識的に観察してみる。そうすると、思ってもみない発見に出会い、考えてもなかったゴールに向かってみたくなる。
そんなことにあらためて気づかせていただきました。
楽しかった!
これだからものづくりはやめられないな。
断りたくなるようなめんどくさいオファー、お待ちしてます。
おまけ

実験中に飲んでたコーヒー。いつの間にか真珠核が入ってました。味はしなかったよ。
丸山僚介(山脈・店主)

デザインを手段に、物・事・人が心地よく巡る場づくりをしている。KIITOの企画運営に6年従事。3年間の工務店勤務を経て、地域資源循環の拠点「山脈」をオープン。