2025 12 19
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ゆらぎ、にじみ、重なりあうように|紡績工場から、糸より手ぬぐいまで祭 開催

SBRICKは、かつて紡績工場として糸や布を生み出し、洲本の発展を支えてきた場所です。役割を変えた今も、さまざまな人、もの、ことが交差し、新たなクリエイションが生まれる場として進化してきました。そんなかつての記憶と現代の役割を重ね、手ぬぐいブランド「にじゆら」とのイベント「紡績工場から、糸より手ぬぐい祭」が開催されました。

紡績工場から、糸よりてぬぐいまで祭

2025年10月18日(土)
https://sumoto-brick.jp/itokara/

ゆらり、ゆらりと、ふわり軽やかで。

株式会社ナカニが手掛ける手ぬぐいブランド「にじゆら」。大阪・堺を拠点に、昔ながらの注染(ちゅうせん)という技法で手ぬぐいをつくり続けています。

布に染料を注ぎ、“にじみ”や“ゆらぎ”をそのまま受け止める注染は、ひとつとして同じものが生まれない表現です。拭う、包む、飾るといった日々の暮らしの中で、使う人それぞれの感性に寄り添い、世代を越えて親しまれています。

SBRICKとのコラボレーションは3度目。にじゆらさんが手掛ける手ぬぐいの魅力を、さらに!もっと!浴びるように感じてもらえたらと、エントランスとホールには象徴的な空間演出が施されました。

長尺の手ぬぐいの反物が70枚以上。ゆらぎにじむ彩りがゆらり、ゆらりと。見ているだけでふわりと軽やかな気持ちにさせられます。

象徴的なホールの真ん前に構えられたのは、にじゆらさんの出張店舗。オープンから、手ぬぐいを選ぶ人たちでひっきりなしに賑わいました。

“にじみ”と“ゆらぎ”、そのものを体験

出張店舗の前で行われたのが、にじゆらさんの特徴でもある“注染”を体験できる「染めワークショップ」です。読んで字のごとく、布に染料を注ぎ染める技術で、手ぬぐいの需要が増加した明治初期に大阪で生まれた技法です。

防染糊をつけたさらしもめんを、ジャバラ状に重ね合わせ、その上からじょうろで染料を流し込みます。すると、30枚~40枚分の手ぬぐいを一気に染め上げることができます。

当時から生産効率をひたすらに考え抜いていた、大阪人らしい生産方法だとにじゆらさんが教えてくれました。

参加した人たちは、それぞれに好きな染料のじょうろを手に取って、布に色を注いでいきます。

ちょっとした手の動きや、注ぎ加減で異なる色と色。まさにブランド名そのものの、“にじみ”と“ゆらぎ”の体験が面白く、大人も子どもも、夢中になってその様子をのぞき込んでいました。

ひと筆、ひと筆、色を置いて。

イベントに合わせ、手ぬぐい用の原画を描き下ろして下さった、絵描きのくどううたさんの展示も開かれました。手ぬぐいの原画制作に至るまでの道のりや、ご自身の絵画を中心にした作品展で、クラフトベースで、10月11日(土)〜11月9日(日)の期間に開催されました。

「糸より手ぬぐいまで祭」の当日には、ライブペイントで少しずつ作品を描き進める様子を公開。”染め”とはまた異なる表現。ひと筆、ひと筆、色が置かれ、描かれていく様子は、くどうさんの内面がまっすぐに映し出されていくよう。

注染のワークショップの賑わいとは対照的に、訪れた人たちは静かに足を止め、制作の様子を見守っていました。ふたつの空間のコントラストが、それぞれあるのが心地よく、その違いを楽しむように、人々が行き来していたのが印象的でした。

2024年夏に初めて作品を発表してから、絵描きとして活動をはじめたというくどうさん。ライブペイントは、初の試みとのこと。この日以外にも、4日間をかけて絵は完成し、年内クラフトベースで展示されています。

創作意欲をかきたてるマーケット

今回は「にじゆら」さん以外にも、糸や布にまつわるお店が軒を連ねる「糸から手ぬぐいまでマーケット」コーナーも。

京都からおこしくださったMONDOFILさんは、編んで楽しい、インテリアとしてもかわいい糸や毛糸の販売を。糸そのものを、ひとつの作品として仕上げられています。

思わず笑顔になってしまう、カラフルな糸は神戸のnijiyarnさん。オリジナルの手染め糸や引き揃え糸が、ひときわ目を引いていました。

手に取って色を比べたり、使い方を店主に尋ねる人の姿があちこちに。素材との出会いから、新しい創作意欲がわいた人もいたはず。糸や布、そのものの魅力に触れながら、ものづくりの入り口に思わず立ちたくなるような空気感が漂っていました。

糸から手ぬぐいまでマーケット

さささ
MONDOFIL
nijiyarn
Filledwith
喜 MONO フタツキ
dandelion

くるりつつんで、召し上がれ。

イベントのお楽しみと言えば“おいしいもの”が欠かせませんよね。手ぬぐいにかけて「つつむ食堂」と題したコーナーに、4組の地元淡路島の飲食店さんたちが駆けつけてくれました。

淡路島ブルースさんは、お店でも人気の「だし巻き卵」で出店。くるくると包まれていく手さばきに、うっとり眺める人たちも!

まめはるさんは、大福やどら焼き、など、餡子をつつんだ和菓子たち。まさに「つつむ」!

お酒のアテに評判だった、EXODUS淡路島さんの手包み餃子。餃子でぐびっと一杯、二杯、進んだ人もいたとかいないとか!?

昼から酒馬さんとレスプリドグリシーヌさんの、スペシャルユニット、紫の馬からは、イベント限定のタコスも!

だし巻きや餃子にタコス、さらに和菓子まで。おいしい香りに誘われ、自然と足を止め、店主さんと話し込む。さらには「昼から一杯!」と、会場には肩の力が抜けた、ごきげんな時間が醸し出されていました。

つつむ食堂

淡路島ブルース
・紫の馬(昼から酒馬レスプリドグリシーヌ
EXODUS淡路島
まめはる

染める人、絵を描く人、素材をつくる人、おいしいを届ける人。分野の異なる人たちが同じ場所に集い、それぞれの営みを重ねながら、同じ時間を過ごした一日。赤や黄色、注染の染料が布の上でゆらぎ、にじみ、重なり合うように。関わってくださった人や訪れてくださった人たちが、ゆるやかに交わり、S BRICKらしい心地よい空気が生まれていました。