「クラフト」と聞いて思い浮かべるのは、編物や木工作品などの手仕事のモノかもしれません。ですが、私たちは、作った人やその想いが感じられるモノ作りを「クラフト」と捉えます。そう考えると、淡路島にはモノだけでなく、食を通じたクラフトもたくさんあることに気づかされます。
昨年12月に開催された「おいしいクラフト祭」が、今年は“World”に進化して帰ってきました。島内で暮らす多国籍の人々の協力のもと、世界各国の料理や文化に触れられる一日。さまざま国出身のクラフトマンたちが集まったイベントをレポートします。

世界の郷土料理を、淡路島で再現するなら?
淡路島に在住する世界の人々を代表し、3か国の方々が淡路島の料理人とタッグを組み、故郷の味を再現しました。
- 296-5 × エンゲ(南アフリカ共和国)
- 立ち呑み淡路島ブルース × アンナ(ポーランド)
- Charlar-チャルラール- × マック(アメリカ)
エンゲさんは南アフリカ共和国出身。今回のコラボレーションにご協力いただいたのは南あわじ市の福良にお店を構える、296-5 さんです。

エンゲさんの故郷の味は「ブロボスロール」。南アフリカのホットドッグのようなもので、トッピングするソースのチャカラカがアフリカらしい味わい。南アフリカでは肉や魚、サラダなどなんにでも合わせるのだそう。



前回のクラフト祭にも参加してくださった立ち呑み淡路島ブルース さんとコラボしてもらったのは、ポーランド出身の アンナさん。

ポーランドのクリスマスには欠かせない「ピエロギ」。生地からつくる餃子のようなもので、ポーランドには専門店があるのだとか。



そして3組目は、Charlarさんとアメリカ出身のマックさん。ケンタッキー州出身ということで、フライドチキンを再現!

マックさんのお母さんの味をベースに作ってみてくださったのですが「母の味を超えたかも?」とのこと!



日本国内ではなかなか味わいえない3か国の味。イベント当日は、いずれの店舗の料理にも、島の皆さん興味津々でした。一緒に世界の味を再現してくださった料理人のみなさま、ありがとうございました!
今日だけで、世界旅行!
3組のコラボレーション以外にも、当日は、日本・タイ・ベトナム・ネパールの料理が楽しめる飲食店に加え、イギリス・インド・フィンランドの雑貨を扱うショップなど11のブースが並びました。


また、韓国からゲストとして招かれた4人の料理人たちが「島ソプン」を開催。ソプンとは日本語で遠足のこと。数日かけて淡路島をめぐり、そこで得たインスピレーションから、この日だけのおいしさを表現してくださいました。



この「島ソプン」の様子はクラフトベースでも展示され、異なる文化圏の人から見た淡路島を垣間見ることができました。

NOMADIC KITCHEN
(ノマディックキッチン)
このバッグには淡路島の物語や島の産物、島民の生活がたくさん詰まるだろう。メインカラーには明るい黄色を選んだ。黄色は喜びや楽しさ、暖かさを象徴する色。また、知的な活動や創造力を刺激する色としても知られている。私たちのプロジェクトが淡路島の人々にとって楽しいものになり、韓国から来た4人のシェフにとって、新しいアイデアや成長のきっかけになるだろうか。


食をきっかけに、つながる世界
淡路島にインターンとして3カ月滞在していたフランスの大学院生クロチルドさんによる本場のクレープも。

クロチルドさんはブルターニュの南にある、サン・ナゼール出身。16世紀までブルターニュはフランスとは別の国だったこともあり、自分たちのアイデンティティや文化を守ろうという動きが活発です。

ブルターニュでは甘いものも、しょっぱいものも、どちらもクレープと呼ばれるのだとか。クラフト祭では、ブルターニュ地方に残る文化を紹介しながら、ブルターニュ風にラム酒をつかったクレープを提供してくださいました。

またイベントでは、環境への配慮として容器の持参が呼びかけられました。これも、実は韓国のゲストのみなさんの一言がきっかけとなりました。
韓国で開催されるマーケットでは、容器を持参したり、食器の貸し出しが一般的なのだそうです。そこで今回も食器の貸し出しと返却の仕組みも用意されました。
開催直前にInstagramで呼びかけたにもかかわらず、多くの人が食器を持参したり、リユース食器を利用してくださったようです。異なる文化から刺激され、心地よい循環を目指す姿勢が生まれました。

多文化が交差しながら、おいしさを通じた新しい出会いが生まれ広がった一日。当日はおよそ1000人の来場者でにぎわい、いつもより広い世界へと扉が開かれていました。